2012年3月10日土曜日

決断できないリーダーとは?

最近、『「決断できないリーダー」が会社を潰す』(冨山和彦著)を読みました。著者の冨山氏は産業再生機構のCOOを務めました。数々の企業の再生に携わってきた方であり、多くの修羅場を経験してきた方です。それだけに、その言葉は実に重く受け止めました。この著書で語られている「決断できないリーダー」ですが、もっと具体像を示します。それは、
 
 ①対立する2つの選択肢があった時に、両者共に、もしくは両者の間を選択しようとする。
 ②意思決定をしなければならない時に、意思決定をしない理由を見つけて決定を先送りする
 ③問題点があっても、気がつかないふりをする。もしくは、気がついていても調整はしない。
 
などがあります。こうなると、周りにも何人か思いつく人が出てくるでしょう。決断できないリーダーというと、よほど能力のない人と思う人もいるでしょうが、何かスキルの欠けている人というわけではなく、小生の理解では「修羅場を経験してきていない人」と捉えた方がよいようです。つまり、多くの人は修羅場など経験していないわけですから、身を引きちぎられるような決断を迫られた時には、上記の3つのどれかに陥ってしまうことでしょう。

 ところで、もう東日本大震災から1年が過ぎようとしています。福島の原発事故も重なり、今では日本全国で稼動している原子力発電所はわずか2機だけ。5月には日本の全ての原子力発電所が停止してしまうことでしょう。この関連ニュースを聞いていて、ここにも決断しないリーダーがいたのかと感じたニュースがありました。
 
 原子力発電所は約1年ごとに定期点検を義務付けられており、再稼動するときには地元自治体の首長の承認が必要です。ただし、この承認は稼動のための条件の一つに過ぎません。極端な言い方をすれば、例えば首長が再稼動を命令したとしても、国や電力会社が安全を稼動を認めなければ稼動できないのです。なので、自治体の首長の承認は地元の代表として再稼動を認めるのか、それとも認めないのかを意思決定するべきなのです。
 
 ところが、最近のニュースでは原子力発電所がある地域の首長は、「国がやるべき仕事をやっていない。」と言って意思決定を先送りしていました。もしも再稼動を認めないのなら、地元としてストレステストをやっても承認はしないとはっきり示せばよいはずです。しかしながら、「現時点では」とか、「その前に国が責任を果していない」とか言って意思決定を先送りしているように見えます。
 
 地元住民の意見集約の結果として、再稼動を認めないのならそれでもよい。でも、それならば代替エネルギーをどうするのか、代替エネルギーがあってもコスト増の可能性が高くその対策をどうするのか、原発周辺は城下町のごとく周辺産業がありましたがそれがなくなるわけですから保証をどうするのか等、問題山積なのです。意思決定を行っていれば、もうこれらの対策をどうするか検討の段階に入れているはずです。
 
 現在でも、意思決定が行われていません。なので、原子力発電所の中では多くの従業員が再稼動を目指して津波対策などのさまざまな設備投資を行っています。これでもし、再稼動を認められないのなら、全て無駄! そもそも再稼動を認めないのならストレステストだってやる意義がありません。意思決定を遅らせることがこのような中途半端な状態を続けることになるのです。意思決定をできないリーダーが首長をやっているのです。これで日本丸も潰れていくのでしょうか?

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